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日和が(おそらく)飛び降りたアパートはかなり高層で、その階は三〇ほど。
そんな高い所から墜落した彼女の体はぐちゃぐちゃだったようだ。
肉は引き裂け、骨は潰れ、内臓も表に顔を出していたとか。
あまりに悲惨なその状況に日和の両親もまだ心の整理がつかないようで、葬式はまた後日ということになった。

天気予報通り、この日は晴れた。
登校すると、教室の誰もいない二つの机には、小さな菊を入れた花瓶が置かれていた。
二日に連続、このクラスから二人消えたのだ。
普通はその偶然に不審がるだろうが、今みんなの心はそれよりも、悲しさが勝っていたのだろう。
教室には重たく暗い空気が流れている。
女子生徒たちは、黒板の前に一つに集まって泣いていた。
たった一人を除いて、

彼女は窓際の一番後ろの席で肘をついて、窓の向こう側を向いていた。
具体的に、向こう側の何を見ているのか分からない。
何かを考えているような、逆に、何も考えていないような。

俺は、自分の席より先に、二階堂剣の元へと寄った。

「貴方、私と同じ馬鹿になりたいの?」

二階堂の視線は一度も動いていない。
どうやら気配で俺を感じ取ったらしい。

「その馬鹿に言われたくないな」

二階堂は小さく肩を落として、ため息をついた。
何を言われようが俺の意思は変わらない。
それを悟ったのか、彼女は席から立ち上がり、

「来て」

俺の腕を強く掴んで、教室を出た。
その手を俺は、振りほどかなかった。


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