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「おはよう、小十郎」
あくる日。 人々のざわめきが聞こえる教室の中、自分の存在感を最大限に消して教室に入室したものの、先を越されて彼女が声をかけてきた。 「お、おはよう・・」 「まったく、噂っていうのは一番タチが悪い。倉林君と伏さん、貴方と仲良くしていたから死んだんじゃないかって」 「ああ、そう・・」 今更ながら周囲の目を気にする俺ではない。 逆にそう思ってくれる方がこれから先、都合がいいだろう。 俺も剣のように、他人を事件に巻き込みかねないからな。 他人とは距離を保っておいた方が彼らの身のためだ。 「だから、私がとことん貴方と仲良くして、それで立証してあげる。覚悟しなさい」 「それはまた、他の誤解を生む気が・・」 ギロリと、今にも殺人を犯しそうな目でこちらを見てきたので、その台詞は空気と共に消失させた。 やっぱり、人というのは、何かしら本当の気持ちを、何かしらの理由で、形にできないでいるのだ。 その気持ちが、良いものなのか、悪いものなのか知らないけれど。 それでも隠されたら、それは他のものにとって、同じにしかならない。 だったらそれは、意味を成すことが出来ないのに。 きっとそれでいいのだろう だって、それが世界の原理なのだから |